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2017.6.24更新
ichi
浜辺のSlice of Life #14 町に気風があるとしたら

地元出身の有名なミュージシャンがいる。
数々のヒットナンバーがあり、そのなかには地元を歌った曲がある。
デビュー曲は特に上手く海沿いの町を言い表している。
曰く「今、何時?」「そうねだいたいね」と言うことだ。

夏になると海岸でそこそこ大きな花火大会がある。
わざわざソレを見るために都会からやってきた友人が言う。

「場所を取りにいかないの?」
一瞬、何を言っているのかが分からなかった。

7時の時報とともに花火が打ち上げられる。
電柱に取り付けられたスピーカーから町会の放送が流れ出す。
「花火大会が始まりました。みなさん海岸へ行きましょう!」
こうしてやっと地元の住民が移動を始める。

都会からやってきた友人は、さっきとは逆の立場になってポカンとしている。

地元にはなかなか美味いハムとソーセージの専門店がある。
高級住宅地のスーパーやら会員制の通信販売をしているらしいが
店頭では普通にキロで売っている。
作って売っているのは、ドイツ人のオッサンだ。
マイスターらしいが、本人も周りもそんなこと気にもしていない。

一回だけ聞いてみた。
「なんでドイツから海沿いのこの町に来たんだい?」
答えは簡単だった。

「ビールのつまみに海風の塩加減がちょうど良い」だと。

一列目の家という言い方があるけれど、その店は二列目の奥まった路地にある。
BeerBarと言うか、とにかく様々なビールが多いことは確かだ。
午後になるとマスターが開店準備で、ポテトの皮を剥く。
フライドポテトが名物なのだ。

ある夏に25mプールがいっぱいになるぐらいのビールを飲んだ。
ビールの二日酔いは殊の外ツライ。
見かねたマスターが作ってくれたのが‘キューバ・リブレ’だった。
ラム&コークとどう違うか尋ねると、コーラの種類が違うとのことだった。

それでもビールが飲みたいと言うと、レッド・アイを作ってくれた。

シンクに水を張りフルーツトマトを浮かべる。
底に沈んだ糖度の高いトマトだけを裏漉しにする。
さらに和手ぬぐいで濾したトマトジュースと生ビールを合わせる。
タバスコのBQQソースを添えて完成だ。

レシピは繊細だが、分量は目検討でいい加減なものだ。

これを見ていたソーセージ屋のオッサンが自分にも出せと言ったが
二日酔い専用だと断られていた。

間口の半分、シャッターが閉まっているラーメン屋がある。
屋号は多分無い。
メニューは醤油ラーメンと味噌ラーメンのみ。
空いている席に順に座る仕組みなので、連れ立って来ても隣り合わせになれない事が多い。
そもそも店内では無駄口が厳禁だ。
皆が黙々と食べている姿は、よくよく見ると異常だ。
特に夏になると異様な熱気の中で、背中を丸めて男も女もラーメンを啜っている。

件のBeerBarにラーメン屋のおやっさんが来ていた。
赤星を一本差し入れる代わりに聞いてみた。
「なんで塩ラーメンは無いんですかね?」
答えは
「塩が一番難しい」だった。

そうねだいたいね気風の町は、概ねこんな奴らばっかりだ。

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