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2017.6.2更新
ichi
浜辺のSlice of Life 13 ホットドックに首ったけ

JRの駅を背にして南へ向かう。
昔からサーファー通りと呼ばれていた道を、海水浴場方面へと向かって進む。
10分もすると、口の内に「しょっぱさ」を感じるようになる。

海水浴場の南の外れに“ママの店”はある。
ママの店がいつからそこにあるのかは知らない。
小僧だった地元の悪ガキが親父になるぐらいの時間は古いらしい。
どうして“ママの店”と呼ばれているのかは誰も知らない。

こんな話がある。
中学で既に一端の波乗りだった先輩が、高校に入ると波から二輪に乗り換えた。
波乗り仲間は先輩と連まなくなった。
それどころか「ポマードが海を汚すから近づくな」と。

それから四半世紀が過ぎた頃、海岸の隅でパドリングからテイクオフの練習をしている父娘がいた。
先輩とその娘だった。
あの頃、先輩の仲間だった人達はその練習を黙って見ていた。

練習に一区切りがつくと父娘は“ママの店”にやって来た。
「ママ久しぶり」先輩が言う。
「そうでもないさ」ママが応える。
視線で娘を指して聞く。「あんたの娘かい?」
先輩の答えを待たずにママが言う。
「あんたのパパは昔はカッコ良かったんだよ。今は立派なオッサンだけどね」
「あたしのことは“ママ”と呼びな。誰かに海岸で何かを言われたら“ママの店”の客だと言えばいいさ」

娘は今では一丁前にカットバックを決めて、“ママの店”でホットドックをパクついている。

あまり知られていないけれど“ママの店”には裏メニューが二つある。
一つ目は、チリドックだ。
その夏一番の暑い日だけ限定でメニューになる。
なんでママがその夏一番の暑さになるかを知っているかなんて分からない。
でもとにかくその夏一番を教えてくれる風物詩だ。

そんなチリドックが一度だけ真冬にメニューになったことがある。
海岸通りの七不思議なんて言われている。

裏メニューその二は、たこ焼きだ。
ママには一人娘がいる。
高校を自主的に卒業すると、いきなり皆の前から消えた。
ママに行方を聞いても「知らないねぇ」とはぐらかす。
そんな娘が海岸通りに帰ってきたのは季節が一巡した秋だった。
娘はホットドックスタンドのカウンターの隅で、たこ焼きを焼きだした。
聞けば大阪に単身で修行に行っていたらしい。
周りはカリ中はトロリとした「たこ焼き」はヒットした。

客のいない昼下がりに、娘が「食べてみて」と‘たこ焼きチリソース掛け’を出してきたことがあった。
かつてママが真冬なのにチリドックを作ったのは、自主卒業をしてこの町を離れる娘のためだったそうだ。
チリドックは娘の大好物。
そしてチリソースは彼女のパパ秘伝の味だった。
たこ焼きを小ぶりにした‘たこ焼きチリソース掛け’は定番メニューとなった。
代わりにスタンダードなたこ焼きが裏メニューとなってしまった。

今日もママの店で
「ケチャップを掛けすぎだ」と叱られながら、ホットドックを食べている。

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